KMK lab
IPFへの道⑤
~葡萄の枝から生まれたグラスマーカー 一本の剪定枝が辿った道のり~
葡萄の剪定で切り落とされる、役目を終えた枝。
そこに新しい命を吹き込み、ワイナリーを訪れる方々の手元へ届けたい。そんな想いから一つの「グラスマーカー」を仕上げるまでの記録を書きました。

一本の剪定枝から
「この葡萄の樹を使って、何か新しい価値を生み出せないだろうか」
同郷のワイナリー、坂城葡萄酒醸造株式会社 成澤篤人代表と弊社代表の川島がとある交流会で交わした会話がきっかけでした。
葡萄の樹は、ワイナリーにとって歴史そのものです。美味しいワインを作るために、冬の剪定で切り落とされる枝の多くは、そのまま処分されてしまいます。「この枝を、もう一度別の形で活かしたい。」その明確な目的が、プロジェクトの出発点になりました。
私たちにとって、これは新たな挑戦でした。
3月末、まず材料の試作に着手しました。集めた葡萄の枝を細かく砕き、バイオマスプラスチックのペレットを試作。強度はどの程度か、どんな質感になるのか。出来上がったペレットを手にして、葡萄の枝が持つ材料としての特性を初めて確かめることができました。
手応えを得て、4月13日、正式にプロジェクトを始動しました。

想いに形を与える

坂城葡萄酒醸造様と当社デザインチームが、「葡萄の特性を活かし、訪れる方に喜んでいただけるものは何か」を起点にアイデアを重ねました。
行き着いた答えが、ワイングラスの脚につける「グラスマーカー」です。
イベントの会場で自分のグラスを見分けられる実用性と、葡萄の樹から生まれたという物語性。その両方を備えたものでした。
4月末、まず形を確かめるため3DプリンターでPOC(概念検証)を開始。
グラスにスムーズに嵌まるか、持ったときの感触はどうか、ワイナリーの雰囲気に馴染むデザインか。
ワイナリーの意向を汲みながら、ミリ単位の修正と試作を繰り返しました。


5月31日に向けて
ゴールは、5月31日の『坂城駅前葡萄酒祭2026』での来場者への配布。
日程から逆算し、作業を進めました。
連休明け、3Dプリンターでの検証を終え、簡易金型を起こして量産試作の段階へ進みました。
ここが最大の難所でした。
3Dプリンターと異なり、成形機に葡萄のバイオマスプラスチックを流し込むと、思い通りにいかないことが続きます。独特の模様を作るためにありとあらゆるテストを繰り返しました。

葡萄由来のバイオマスプラスチックは、ふだん扱う材料とは勝手が違い、一筋縄ではいきません。それでも、これまでの経験を頼りに調整を続け、納得のいく品質に近づけていきました。
そして5月28日、フェスを目前に、最終量産が完了。葡萄の温かみを残したグラスマーカーが、金型から次々と生まれていきました。

つながったバトン
5月31日、葡萄酒祭当日―来場された方のグラスの脚で、私たちが手がけたグラスマーカーが揺れていました。
「これ、今年の冬に剪定された葡萄の枝からできているんですよ」
スタッフがそう紹介すると、来場者がグラスマーカーに目をとめる。
剪定枝から始まった材料が、製品として人の手に渡る。その一連の流れを、実際に目で確かめることができました。
ワイナリーの想いと一本の枝から始まり、材料試作、デザイン、幾度もの試作を経て、グラスマーカーは使い手の手元へと渡りました。
一本の剪定枝が、製品になるまでの『記録』です。

今回、剪定枝をご提供いただいたワイナリー 坂城葡萄酒醸造株式会社様
次回、機械要素技術展へ
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